この世は平等ではない。少年Aによれば、近未来の科学水準は生焼けの肉さえ人を病にうつつを抜かすことを許さないし、玉手箱はちょっと前に『再生上点台』とかいう装置として受け入れられているそうだ。
少女Fによれば、下着泥棒なんてものはとうの昔にAIの前に存在を消し、大地が暴れ狂う中魔石を求めて這いずり回る山賊たちも淘汰された。
私としては、平等であるという権利を皆が主張し、皆が総出でこの星を匿ってあげることを自ら望むことがベストな選択である。だからこそ、この星に大義と大いなる自信を持ってして降り立ったのであるから。
「だから……旧新宿市街からだとサウス・ウェールまでは結構遠いよ、お兄さん、聞いてる?」
えー、まず、ここに降り立ってから約59万200秒に渡る捜査の結果、ここは『地球』という名のつく星ということが判明した。
それはおかしい。
なぜかというと、私のホームも地球だからである。
「お兄さん?」
腰掛けて思案してみよう。うむ、まずここが地球だとして、こいつは何だ?変なウサ耳の被り物をしていて、一瞬今日がハロウィーンと勘違いするような容貌である。あれ実は今日そうだっけか。
「聞けや、飛ばすぞサリークラウンの麓まで」
いや、まず聞いたこと無いんだよね、君のことわざ。しかも、目の前のウサ耳女さんがいうには、ここは『東京』だというではないか。そんなハズはない。私の乗っている馬車から外を見上げれば、見渡す限りの草原が広がっており、私の知っている東京の面影は全く感じることはない。いや、わかるよ読者の諸君。東京にも自然はあるって?そうだとも。しかし君たちもこれを眼の前にしてみろ。
空中には空飛ぶ車ならぬいわゆる翼を広げたドラゴン的なものが旋回しており、明らかにこの世のものとは思えない怪物と牽制を繰り返している。ただそれを除けば、いわゆる日本の田舎の山の風景が広がっていて、そよ風が髪を撫でてくれる。
「だ、か、らああぁ!話聞きなさいよクソジジイ!」
気づいたときにはウサ耳の手拳が顔前に迫っていて、避ける術もない。バゴン、という鈍い音がして、私は意識を手放した……なら楽だったかもしれない。
「アンタは、なんで、話を、聞かないんだよ!」
悪かったよ。だからとめどなく拳を振るうのは止めようか。
「ウサ耳女さん、悪かったって」
「誰が女だ」
ウサ耳は認める方向でやっていくのか、と胸を撫で下ろす。そんな彼と出会ったのは、この星に来てからあてもなく地上をさまよっていた時、たまたま馬車で英雄闊歩する彼が困っていたところを助けたことに由来する。発見した瞬間は私の持ってきた物資も底をつきかけ路頭に迷っていたから、一瞬歓喜したものだが、細身の外見から女であると直感し、しかもありえないウサ耳の外見をしていたので、これは使えないと脳が一蹴した。情報源になっていなかったら一緒にはいなかったであろう。
「何か失礼な事考えてるでしょ。まあ、実際助かったけどさ。あのまま行き倒れになるとこだったし」
「素直に感謝することだよ」
「うるせえよ。もういいや、怒る気もベルデモに食われた。お兄さん、もうすぐ着くよ、旧新宿市街に」

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