「おーい、起きろ玉ノ井」
意識がはっきりしないまま面を上げると、そこにはにやけた眼で私を見る猿がいた。
いや、違った。
「そう、天立は多少ひげっつらだが、立派な人間である」
何言ってんだお前、と間髪入れない彼は、天立あまだてという、我らが梨ヶ丘高校2年生で、類稀な私の友人をしている男である。成績はいい方だと虚勢を張っており、私としては信じる理由がない。なぜならば、非常に馬鹿だから。今も目をキョロキョロさせている。
直ぐにでも荷物をまとめて帰宅したいところだが、生徒会の仕事で何かと手一杯である。
私は生徒会役員では無論ない。しかし、何かと仕事を押し付けてくる厄介者が目の前にいるせいで、こうして時間外労働というわけだ。
「さて、天立。私はいつ帰れるのかな?」
「いつも通り、それが終わったらな!」
私の今取り組んでいる課題は、「魔宝石の発掘の効率化に向けた人心の掌握対策講座」の作成であり、魔宝石の発掘に詳しい私が選ばれたらしい。
いつ終わるのかだって?こちらが教えてほしいほどだ。
「いやあ、しかし助かりますよ、玉の井クン」と後ろから泡銭で塗り固めた様な声がするので振り返ると、センター分け眼鏡の斉藤さいとうがドアに肩を抱かせてつっ立っている。彼も生徒会の一員であり、何かと私に突っかかってくる傾向が強めな人種だ。
「君はそこで何をぼうっと眺めているんだい。手伝ってくれたまえよ」
「確かに、僕も詳しいつもりではありますが、君には負けますからね、王子、クン」
ああ、間違えた。私のイマジナリー親友であった。すまない、彼のことは忘れてくれたまえ。
さて、私玉ノ井超弩級一は、このような学生生活を送っていくわけだが、この物語はここで幕を下ろす。
舞台を換えよう。
君の見ていたこれは、幻想に過ぎない。始まりの主人公の終わりであって、舞台はここではない。

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