001 霧

仄暗い室内に、霧が立ち込めるように白が混ざってゆく。何も見えなくなる前に、とりあえず吐いて出さなければ。

心底哀れに思ったでしょ?

そう言う誰かの声がして、それは自分の脳みそから出たものであると気づかない。

別に特段意味もない。そこに誰かいるとは分かっているが、憎しみも悲しみも哀れみも、全て後ろに置いてきてしまったから。

息を吸い、一旦肺を膨らませ、猫のように丸くなった身体を自覚する。体重を下へ下へ運んでゆくのは、誰の意思だろう。

足を踏み出した先にまた暗闇が待っていて、

私の喉元を通り過ぎていく。粘り気のある不可抗力からとりとめもない魂だけを取り除き、また一歩、一歩、実感のない床を踏みしめて歩く。

どれくらい経っただろう。今はまだ、その時ではないようだ。手元の携帯は21を示す。

まだ就寝の時間でもないが、気怠さが呼び込む眠気に圧倒される感覚が私を襲う。

早く、行かなければならないのに。そこで彼女が待っているのに。思考は巡り巡る。

明日はここにはない。今すぐに行くと、こころのなかで高らかに宣言した途端、意識は途切れた。

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